多くの資本を要する製造業にこそ機能するBCPが必要。
人、モノなどの資源を集約し、電気、水などのインフラを活用してモノを生み出す製造業は、大規模災害などのリスクが生起した場合に最も大きな影響を受ける業界であるといえます。大きな資本を必要とすることからも事業の断続状態が長引けば社員の生活を守ることも困難になるでしょう。ここでは製造業でBCPを策定する場合の考慮事項等について説明します。
製造業におけるBCPの重要性
様々なリソースを使用してモノを生み出す製造業。オペレーションが複雑であればあるほど事前の計画が重要となってきます。
製造業の一般的な特性(他業界との比較) | 事象リスクにおける細部リスク例 |
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多種多様・大量のな機材や機器を事業所等に集約 | 設備、機材や機器の破損等 |
社員等を事業所等に集約→ | 出勤の困難化、職場復帰の長期化 |
電気、上下水などのインフラに大きく依拠→ | 電気、上下水などのインフラが機能しない場合、オペレーションに大きく影響 |
道路などの交通インフラに大きく依拠→ | 原材料の入荷、製品の出荷に大きく影響 |
サプライチェーンに大きく依拠→ | 原材料の入荷に大きく影響、製品の出荷は取引先等のオペレーションに大きく影響。また企業の信頼などにも影響 |
大きな資本で経営→ | 資金繰りに影響、給与の支払いも困難化する可能性 |
生き残るために。製造業のBCPで考えるべきこと
上記製造業の特性(他業界との比較)・リスクを考えると、危機事態が発生した場合企業の存続が危ぶまれるほど大きな影響を受ける可能性があることが分かります。BCPを中心とした対策、備えがないと太刀打ちできないでしょう。製造業にとってBCPは必須の経営資源です。製造業の特性・リスクを踏まえて、製造業BCPで考えるべきことを説明します。
正確なリスクアセスメント(RA)の実施。リスクを知ろう。
- 例えば南海トラフ巨大地震が発生した場合、どのような被害が想定されるのか、自社の事業所はどの程度の震度、津波な予想されるのかなどをしっかり把握しましょう。
- 国や地方自治体の資料によって把握することができます。サプライに関する道路や港湾などの状況、取引先の状況も把握しましょう。
重要業務は? 重要業務を支えるためのリソースは?(重要業務分析 BIA)
- “この業務がないと会社が倒産してしまう!取引先を失ってしまう!”といった重要業務を明確にしましょう。複数ある場合は優先順位をつける必要があります。
- 次に重要業務を支えるためのリソースを明確にしましょう。一般的には人、場所、重要業務に必要な資機材、情報(ソフトウエア含む)などでしょう。
重要業務の目標復旧時間を決めましょう。(重要業務分析 BIA)
- リスク分析を踏まえた実行の可能性や、リスクによって会社が失う売り上げ、信頼、社会からのニーズを踏まえて重要業務の目標復旧時間を決めましょう。
- 一般に製造業では、重要業務の遂行に多くのリソースが必要な場合が多いと思います。重要業務の目標復旧時間を基準として、各リソースの目標復旧時間を決めましょう。
- リスク評価や重要業務などを検討したら、対策を考えましょう。一般に製造業では設備、資本などが大規模となるためとくに平素から計画的に準備することが重要です。
- 例えば、揺れや津波から設備、機材や機器の破損を防ぐためには、固定、かさ上げ、建屋の補強などが考えられますが計画的に行う必要があります。インフラの代替として発電設備を導入、補強する場合も、発電機の燃料設備も含め、資本、時間、計画が必要になります。サプライの代替手段確率も同様です。
- お金の準備も必要です。一定期間売り上げが途絶えることを想定して、給与支払いなども含めて一定の資金を平素から準備しておくことが重要です。行政などが実施する各種融資制度を把握しておくことも有用でしょう。
- 多数の人や多くのリソースが必要な製造業。発災後にBCPを発動し、BCPにも基づいて円滑にオペレーションを行うためには、段取りを周知する必要があります。
- 製造業においては、特に周知の手段としてのSOPやマニュアルなどが必要となります。
以上、製造業でBCPを策定する場合の考慮事項などについて見てきました。特にBCPが重要な位置をしめる製造業。お悩みの場合は、ぜひBCPコンサルタントをご活用ください。