南海トラフ地震の災害対策は万全ですか?無駄なく実効的なBCPを策定しよう

南海トラフ巨大地震の発生が懸念される中、事業を継続するための災害対策は、企業にとって喫緊の経営課題です。すでにBCP(事業継続計画)を策定しているものの、この未曾有の複合災害に本当に機能するのか、また、いかにして無駄のない実効的な対策を講じるべきか、といった課題に直面している防災担当者も少なくありません。

こちらでは、南海トラフ地震に特有のリスクを踏まえ、実効性の高いBCP対策を構築するための要点を専門的視点から解説します。形骸化させない、具体的で無駄のない災害・地震対策の進め方を理解できます。

南海トラフ地震の特異性とは?事業を脅かす災害リスクの違い

南海トラフ地震の特異性とは?事業を脅かす災害リスクの違い

南海トラフ巨大地震への対策を考えるうえで、これが従来の地震災害とは異なる、特有の脅威であることを認識することが重要です。過去の経験則だけでは対応しきれないリスクが存在するため、ここではその具体的な違いを解説します。

複合的な一次災害の発生

南海トラフ地震は、強大な揺れに加えて津波や液状化などが同時に広範囲で発生する複合災害である点が特徴です。特に沿岸部では、津波による浸水被害が想定され、建物や設備に大きな影響を与える可能性があります。長期間の浸水は設備の塩害などを引き起こし、復旧の長期化につながることもあります。また、液状化によるインフラ機能の低下も事業活動の障害となるため、これらの複合的な事態を想定した対策が求められます。

広域かつ長期にわたるサプライチェーンへの影響

被災地域が広範囲に及ぶため、サプライチェーンへの影響が長期化する可能性があります。自社が直接被災しない場合でも、取引先や物流網が同時に機能不全に陥ることで、部品調達や製品供給が停止する事態が考えられます。主要な交通インフラの機能停止は、生産活動に数か月にわたる影響を及ぼすことも想定されるため、平時から供給網の多元化などを検討しておくことが事業継続のうえで重要です。

従来のBCPでは対応が難しいシナリオ

従来のBCP(事業継続計画)は、限定的なエリアでの被災を想定し、他地域からの支援を前提に策定されている場合があります。しかし、南海トラフのような広域災害では、公的支援やリソースが広域に分散し、迅速な支援を期待するのが難しい状況も考えられます。復旧の見通しを楽観的に設定した計画では、有事に機能しないおそれがあります。そのため、自社のリソースで事業を継続する「自助」の視点を取り入れ、現実に即したBCPへ見直すことが大切です。これにより、結果として無駄のない計画につながります。

事業継続を可能にする具体的な地震対策|ハード・ソフト両面のポイント

事業継続を可能にする具体的な地震対策|ハード・ソフト両面のポイント

南海トラフのような巨大地震から事業を守るためには、建物や設備といった物理的な対策(ハード)と、組織的な体制や計画といった対策(ソフト)を、両輪でバランスよく進めることが不可欠です。ここでは、事業継続の基盤となる具体的な地震対策のポイントを、両側面から解説します。

ハード対策:人命と重要資産を守る物理的アプローチ

まず基本となるのが、事業所の状況を把握し、必要に応じて補強することです。そのうえで、オフィス内の什器や工場内の生産設備、サーバーラックなどが転倒・移動しないよう、床や壁に固定する措置も重要となります。また、停電に備える非常用電源は、津波による浸水リスクを考慮し、可能な限り高層階へ設置したり、防水対策を施したりすることが望ましいです。事業継続に不可欠な設計図や契約書、顧客データといった重要資産は、データのバックアップやクラウド化、原本の電子化、高所への保管など、複数の保護策を講じることがリスクの低減につながります。

ソフト対策:発災直後に機能する体制と計画

発災直後の混乱を最小限に抑えるためには、従業員の安否を迅速に確認するシステムの導入が有効です。通信インフラの途絶が想定される中、通常の電話やインターネット回線以外に、衛星電話やビジネスチャットツールなど、複数の連絡手段を確保しておく必要があります。また、有事に誰が何を判断し、指示を出すのか、指揮命令系統を明確にした初動マニュアルを策定し、定期的な訓練を通じて全従業員に浸透させることが重要です。計画は策定しただけでは機能しません。訓練を通じて課題を洗い出し、改善を続けるプロセスが求められます。

従業員と家族の安全確保が事業復旧の基盤

事業の復旧・継続は、従業員の協力なくしては成り立ちません。従業員が安心して対応できるよう、事業所内の安全確保はもちろん、数日間を過ごすための水・食料・簡易トイレ・医薬品などの備蓄品を準備することが求められます。また、従業員の帰宅支援に関するルール作りや、従業員の家族との連絡手段の確保を企業として支援する姿勢も大切です。従業員とその家族の安全を最優先に考えることが、結果として円滑な事業復旧の土台となります。優先順位を明確にし、できることから着実に進めることが、無駄のない対策の第一歩です。

BCPを形骸化させないために|無駄なく実効性を高める進め方

BCPは、策定するだけでなく、いかに実効性を伴った「生きた計画」にするかが重要です。ここでは、多大な労力をかけて策定したBCPを形骸化させず、無駄のない実効的な対策とするための、実践的な進め方について解説します。

事業インパクト分析(BIA)で守るべきものを明確化する

すべての事業や業務を均等に守ろうとすると、コストとリソースが分散し、結果としてどの対策も中途半端になるおそれがあります。まずは事業インパクト分析(BIA)を実施し、南海トラフのような巨大地震の際に停止した場合に経営への影響が大きい「中核事業」を特定することが第一歩です。守るべき事業の優先順位を明確にすることで、限られた経営資源を効果的に集中させることが可能になり、効率的な計画策定につながります。

目標復旧時間(RTO)で具体的なゴールを設定する

BIAで特定した中核事業を「いつまでに」復旧させるか、具体的な目標復旧時間(RTO)を設定します。例えば、ある事業のRTOを「3日以内」と設定すれば、その達成のために必要な人員、代替拠点、データバックアップの方法といった対策が具体化されます。このゴールが明確であるほど、取るべき対策のレベルや優先順位がはっきりし、過剰でも過小でもない、“無駄なし”の対策を講じることができます。

定期的な訓練とレビューで計画をアップデートする

BCPは一度策定したら終わりではありません。事業内容や人員の変更、新たなリスクの出現に応じて、定期的に内容を見直す必要があります。安否確認訓練やシミュレーション訓練などを通じて計画の実効性を試し、そこで見つかった課題を改善していくサイクルを回すことが不可欠です。この継続的なプロセスこそが、BCPを常に現実的で有効なものに保つ鍵となります。

企業の未来を守るための重要な経営判断!BCPの策定・見直しをお考えなら

南海トラフ巨大地震は、広域な複合災害やサプライチェーンの寸断など、従来の想定を超えるリスクを事業にもたらします。これに備えるためには、ハード・ソフト両面の具体的な対策に加え、BIAやRTOに基づいた無駄のないBCPの策定と、継続的な訓練・見直しが不可欠です。

災害・海外リスク総研合同会社では、南海トラフをはじめとする巨大災害に対するBCPの策定・見直しをご支援しております。「自社のBCPが本当に機能するのか不安」「何から対策すれば良いかわからない」といったお悩みを持つお客様は、ぜひ一度ご相談ください。

防衛省・自衛隊での豊富な実務経験を持つコンサルタントが、お客様一社一社の実情に合わせ、無駄がなく現実に即したBCPの構築を丁寧にサポートいたします。机上の空論で終わらない、真に企業の力となる危機管理体制の構築をお手伝いさせていただきます。