企業のBCP対策は万全ですか?大企業・中小企業別の最適プラン
予期せぬ自然災害や国内外の情勢変化など、企業活動を中断させるリスクは多様化・複雑化しています。こうした状況下で、事業継続計画(BCP)の策定は、すべての企業にとって無視できない重要な経営課題です。しかし、その必要性を認識しながらも「具体的にどのくらいの費用がかかるのか」「大企業と中小企業では、取るべき対策がどう違うのか」といった課題から、策定に踏み出せないケースは少なくありません。
こちらでは、BCP対策を費用対効果の観点から捉え、企業規模別に最適化するための考え方と具体的なポイントを専門的な視点で解説します。自社の事業を守り、企業価値を高めるための実効性ある一手を見つけることができます。
BCP対策の費用対効果を考える|コストから未来への投資

BCP対策を検討する際、多くの企業で課題となるのが費用の問題です。しかし、その支出を単なるコストとして捉えるか、将来の企業価値を守り高めるための投資として捉えるかで、取り組みの質は大きく変わります。ここでは、BCP対策における費用対効果の基本的な考え方と、その価値を最大化する視点について解説します。
BCP未策定がもたらす潜在的リスクとは
BCPがない状態で大規模災害などに直面した場合、事業の停止期間が長期化する可能性があります。これは直接的な収益減だけでなく、サプライチェーンにおける供給責任の不履行、顧客離れ、企業信用の低下といった、数値化しにくい二次的な損失につながるおそれがあります。復旧の遅れが、重要な事業機会の損失を招くことは少なくありません。
「守りのコスト」から「攻めの投資」への転換
BCP対策は、有事の際の損失を最小化する「守り」の側面だけではありません。BCPを策定・運用している事実は、取引先や金融機関からの信頼性を高め、企業価値の向上に寄与します。また、策定プロセスを通じて自社の事業の核や脆弱性を再認識することは、平時における業務効率化や経営戦略の見直しにもつながる「攻め」の側面も持ちあわせています。
対策費用を最適化するための視点
費用対効果を高めるためには、計画的に支出を最適化することが求められます。
リスクの優先順位付け
すべてのリスクに完璧に対応しようとすると、費用は膨大になります。自社にとって最も影響の大きいリスクを客観的に評価し、優先順位をつけて対策を講じることが重要です。
スモールスタートの徹底
最初から全社的なBCPを目指すのではなく、まずは中核事業に絞って計画を策定するなど、段階的に取り組むことで初期費用を抑え、実効性を高めることができます。
公的支援制度の活用
国や地方自治体は、企業のBCP策定を支援するための補助金や助成金制度を用意している場合があります。これらの制度を調査・活用することで、費用負担を軽減することも有効な手段です。
大企業のBCP対策|サプライチェーンと海外リスクを考慮した戦略

事業規模が大きく、国内外に多数の拠点を持ち、サプライチェーンが複雑に絡み合う大企業のBCP対策は、より網羅的で戦略的な視点が不可欠です。ここでは、大企業特有のリスクを踏まえたうえで、実効性の高いBCPを構築するための要点を解説します。
事業影響度分析(BIA)に基づく優先順位の明確化
まず実施すべきは、事業影響度分析(BIA:Business Impact Analysis)です。これは、各事業が中断した場合の影響を財務的・非財務的側面から定量・定性的に評価し、復旧の優先順位と目標復旧時間(RTO)を決定するプロセスです。BIAにより、限られた経営資源をどの事業の継続・復旧に優先的に配分すべきかが明確になります。
サプライチェーン全体のレジリエンス向上
自社拠点だけでなく、一次・二次取引先を含めたサプライチェーン全体のリスクを把握することが重要です。特定取引先への依存度を評価し、代替調達先の確保や在庫の分散化、重要部品の共通化など、供給網の寸断を防ぐための多角的な対策が求められます。
多様化する海外リスクへの対応
グローバルに事業を展開する大企業にとって、国内の自然災害のみならず、海外拠点が直面する地政学的リスク、テロや紛争、政治・経済の混乱といった事象も事業継続を脅かす要因です。これらのリスク情報も収集・評価し、BCPに組み込む必要があります。
中小企業のBCP対策|実効性を重視した始め方とポイント
経営資源に限りがある中小企業にとって、BCP対策は後回しにされがちですが、実際には一度の被災が事業の存続に直結する可能性があり、その重要性は非常に高いといえます。ここでは、大企業のような網羅的な計画ではなく、実効性と柔軟性を重視した中小企業ならではのBCP対策の進め方を解説します。
重要業務の特定と目標設定
まずは、会社の利益や顧客からの信頼維持に直結する「中核事業」は何かを明確にします。すべての業務を対象にするのではなく、この中核事業を維持・復旧させることに焦点を絞ります。そのうえで、その事業を「いつまでに(目標復旧時間)」「どのレベルまで(目標復旧レベル)」回復させるのか、現実的な目標を設定することが第一歩です。この絞り込みが、限られたリソースを有効活用する鍵となります。
経営資源を「ヒト・モノ・カネ・情報」に分けて考える
BCPは複雑に考えすぎず、守るべき経営資源を具体的に整理することから始めます。特に中小企業では、以下の観点で具体的な代替手段や保全方法を検討することが効果的です。
- ヒト:従業員の安否確認方法や緊急連絡網の整備、指揮命令系統の確認、代替要員の確保
- モノ:主要な設備や機器の代替調達先のリストアップ、オフィスの代替拠点(テレワーク環境含む)の検討
- カネ:当面の運転資金や復旧費用の確保、緊急時に活用できる融資制度や保険の確認
- 情報:顧客データや技術情報、経理データなど、事業継続に不可欠な情報のバックアップと復元手順の確立
シンプルでわかりやすい計画書の作成
分厚く複雑な計画書は、緊急時に機能しません。誰が、いつ、何をするのかが一目でわかるように、チェックリスト形式やフローチャートなどを活用し、シンプルで実践的な計画書を作成することが重要です。定期的な見直しや訓練を容易にするためにも、簡潔さを心がけるべきです。
企業価値を高めるBCP対策|規模に応じた一歩から
BCPは有事の損失を抑えるだけでなく、平時における企業価値や信用の向上に貢献する戦略的な投資です。大企業はサプライチェーン全体を、中小企業は中核事業と重要資源に焦点を当てるなど、自社の状況に合わせた実効性のある計画を策定することが肝要です。しかし、リスクの特定から具体的な計画策定までには、専門的な知見が求められる場面も少なくありません。
災害・海外リスク総研合同会社では、事業継続計画(BCP)の新規策定や見直しに関し、企業の皆様が直面する多様なリスクや課題に、専門的かつ実践的なコンサルティングサービスを提供しております。
長年にわたり防衛省・自衛隊での戦略立案や、世界各国での危機管理実務を経験してきたプロフェッショナルが、企業様ごとのリスク特性や経営環境を丁寧にヒアリングし、最適なBCP策定をご支援いたします。
自然災害をはじめ、海外拠点に関連する地政学的リスクやパンデミックなど、幅広いリスクに対応可能な事業継続計画を構築いたします。費用対効果にも配慮した最適なプランをご提案いたしますので、BCPに関するお悩みや課題をお持ちのお客様は、災害・海外リスク総研合同会社へぜひご相談ください。