【BCP コラム】BCPの基本  事業(業務)影響度評価(BIA:Business Impact Analysis)の手法

 事業継続計画(BCP)を策定する際、事業(業務)影響度評価は最も重要なステップの一つです。ここでは、最小限の労力で最大限の効果を得るべく事業(業務)影響度評価において最低限行うべきことを解説します。

これを行うだけで、事業継続力は大幅に向上。事業(業務)影響度評価(Business Impact Analysis: BIA)でやるべきこと。

・事業(業務)影響度評価の手法は複数あり、対象とする組織や関係する人などが大きければ大きいほど事業(業務)影響度評価は複雑になる傾向がありますが、事業(業務)影響度評価では最低限以下を明らかにしましょう。

①重要業務は何か? 複数重要業務がある場合はそれらの優先順は?

重要業務を行うために必要な業務やリソースは何か?

③災害等による重要業務の中断はいつまで許容されるか?

重要業務の目標回復時期(RTO : Recovery Time Objective)は?

重要業務とそれらの優先順の決定。社会や地域への貢献も重要な考慮要件

・営利企業であれば、通常、製品やサービスなどを提供してその対価を得ることになりますが、この製品やサービスなどの提供が滞った場合利潤に大きな影響を及ぼす、といったことに直接つながる事業や業務が重要業務となります。

・利潤に加えて、社会や地域への貢献も重要な考慮要件になるでしょう。利益は低いが供給が停止すると地域の方々が非常に困る、といった製品やサービスなどの業務は重要度が高いといえるでしょう。リピュテーションといった無形の財産も大切にしたいところです。

・また、決定した重要業務とそれらの優先順を関係者に周知し認識を共有しておくことも重要です。認識を共有することにより非常時はもとより、普段から関心が向くことにより業務改善などポジティブな影響も期待できるでしょう。(周知に際しては、重要業務に直接携わらない従業員等の士気も考慮して慎重に周知範囲を決めましょう。)

重要業務を行うために必要な具体的な業務やリソース。人・もの・かね・情報などなど

・重要業務を特定したらそれを行うために必要な業務やリソースを洗い出しましょう。

・想定するリスクが生起した場合に、必要な業務やリソースがどのような影響を受けるか検討しましょう。他社さんなどから必要な製品やサービスの供給を受けている場合は、他社さんの状況も確認しましょう。これらの確認、検討がのちほど行うリスクへの対処(Risk Treatment)につながっていきます。

MTPDとは?

・“Maximum Tolerable Period of Disruption”の略で、最大許容中断時間のことです。

・サプライチェーンが高度・複雑に発達している現代においては、すでに協力会社などから「大災害が発生したとしても×日以内に納品してください。」などと依頼されている場合があるかもしれません。そういった基準がない場合は、カスタマーからのニーズ、市場全体の動向、自社の資本などを考察して設定する必要があります。

・可能であれば、時間のみならず重要業務の質・量についても考察し、精度を高めましょう。

重要業務の回復の可能性は?

・いよいよ重要業務の目標回復時期(RTO : Recovery Time Objective)の設定です。最大許容中断時間(MTPD:Maximum Tolerable Period of Disruption)は主に必要性の観点からの検討でしたが、実行の可能性を踏まえて目標時期を設定しましょう。例えば、南海トラフ地震において、20mの津波が予想される地域に工場がある場合、MTPDが6時間としても、RTOを6時間に設定することは無理があるでしょう。

・RTOの設定は、予想されるリスクが生起した場合、先に検討した重要業務を行うために必要な業務やリソース確保などのための目標時間を積み上げることでも設定できます。この際、当面の処置によって可能となる目標時間と、代替工場の建設など予算と時間をかけて対策ができた場合の目標時間を分けて考えるなど整理が必要となる場合もあります。

使える事業(業務)影響度評価(Business Impact Analysis :BIA)にするためには見直しが必要!

・事業(業務)影響度評価はBCP策定における重要なステップの一つですが、評価してBCPを策定して、はい終わり! ではありません。少なくとも定期的な見直しが必要です。

・我々は変化する世の中に生きていいます。皆様の会社や組織自体が変化することもあるでしょうし、取り巻く環境も目まぐるしく変化しているのではないのでしょうか。

・朝令暮改では困りますが、少なくとも半年に1度は、変化事項を踏まえて見直すようにしてください。また、いうまでもありませんが環境が大きく変化した際は、その際に見直す必要があるでしょう。(了)