【台湾有事、安全保障ニュース・コメント】太平洋上空で中国空母警戒監視中の海上自衛隊機に中国軍機が異常接近

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・防衛省は6月11日、太平洋上空で7日から8日にかけて中国軍の戦闘機が海上自衛隊の「P3C」哨戒機に対し、約45メートルの距離まで接近したり、前方を横切ったりする特異な飛行をしたと発表しました。

・中国海軍は現在、空母2隻を中心とする艦隊グループを宮古島南方から小笠原諸島南方のいわゆる第1列島線から第2列島の広大な太平洋地域に展開しており、自衛隊が警戒監視行動をとっています。空母2隻を中心とする艦隊グループが同地域に進出したのは初となります。

コメント:

・海自P3Cはレシプロの対潜哨戒機、対潜水艦戦(ASW)や警戒監視、時にはハープーンによる対艦攻撃などにも運用されますが、空対空戦闘能力はありません。機動性も戦闘機にかなうはずもなく攻撃されたら回避不能、クルーは相当な恐怖を感じたかもしれません。

・すでに以前から言われていますが、中国軍は西側軍事筋の予想を上回るペースでその作戦能力を向上させています。

・先般5月にインド・パキスタンの間で生起した大規模な航空作戦にて中国製戦闘機J10を運用するパキスタン空軍が、インド空軍の新鋭フランス製戦闘機を複数撃墜したとの報道がありました。パキスタン側は相手を見ることなく撃つ視界外戦闘で空中管制と地上レーダーをも組み合わせた近代的で組織的な戦術を用いて、これまた中国製の高性能空対空ミサイルにて新鋭フランス製戦闘機を撃墜したそうです。

・戦闘結果が事実であれば(ほぼ事実であると思料します。)、中国製戦闘機が中国製空対空ミサイルにより西側新鋭戦闘機を撃墜した初のケースであり、ハリボテではないカタログスペック通りの能力が実戦で証明されたことになります。中国軍や共産党指導部も大いに自信をつけたことと思います。

台湾有事の蓋然性に目を向けると、まだまだ大規模な地上部隊(多くの兵員、火砲、戦車、弾薬など)を揚陸させる能力やその兵站を維持する能力は十分でない、との見方もありますが、先進的な応急桟橋システムを開発するなどして着々と上陸作戦能力の向上を図っているようです。

・戦争は侵攻する側の指導者のパーセプション(認識)ギャップから起こる場合が多いといわれています。有名なところでは1950年に勃発した朝鮮戦争、北朝鮮の指導者金日成主席が米国のアチソン・ラインの意味を誤認し、南進のリスクを見誤ったともいわれています。

・もし、中国共産党指導部がその軍事力を過信するに至れば、パーセプション・ギャップが生まれ一気に台湾有事の蓋然性が高まることになるでしょう。その動向から目が離せません。